【本】#10 『ふたご』
『ふたご』
(著者:藤崎彩織)
筆者の藤崎彩織さんは、本当に、常日頃から自分自身の内なる言葉に意識を働かせ、映る日常を良く見ているなと思う。
だから、表現の一つ一つが想像しやすく、リアルで、脳内に情景がカラーで浮かんでくる。
だから余計に、月島が過ごしてきた絶望的な人生もそれをすぐ側で見てきた夏子の苦しみも、絶望から這い上がる月島と周りの人間の素晴らしさも、それと比べてしまう夏子の焦燥も、手に取るように想像が出来て、一緒に涙して、苦しんで、喜んだ。
これが、実際にあった話のほんの一欠片なのかなあと思うと、私も何だか焦ってしまう。
そう、夏子の様にね。
常識に縛られたつまらない人間になっていないか?
本当に自分は必要とされているのか、頑張れているのか?
頑張れていなくて苦しんでいる人の事を怠け者だと思っていないか?
この本を読むのは3度目くらいだけど、この本を閉じた後に『エデン』を聴いて涙を流したのは初めて。
是非、色んな人に読んでもらいたい……。