【本】#09 『空の走者たち』
『空の走者たち』
(著者:増山実)
出版:ハルキ文庫
2016年の春に、入院する時に購入した本。
もう一度言う、"2016年の春"。
結局、その時に読み終えず、真ん中に栞が挟んだままだった。
今度こそ読もうと、4年ぶりにこの本を開けたら、最初に出てきた言葉。
『2020年4月18日』
目を疑った。
これを読み始めたのは確か、2020年4月30日くらいだったから、本当にビックリした。
筆者が描いた未来にきてしまったようだった。
なぜ2020年かというとテーマが『東京オリンピック』だったからだ。
この4年間、1度も手に取らなかった本を、今このタイミングで手に取った事を少し怖く思う。
きっと神様に読まされている。
内容は、実際にあった1964年の東京オリンピックの、円谷幸吉選手にフォーカスを当てた話だ。
本当にあった話と、フィクションが入り交じってる。
そしてこの本を書いてた"過去"と、その時は"未来"だった"現在"が交錯して、凄く不思議な気持ちになった。
小説の中にも、そういうシーンがある。
2013年を生きる少女・ひとみと、1965年を生きる円谷幸吉が、一緒に話し、走るシーン。
ひとみが過去の世界にタイムリープするシーンがある。と、一言で済ましてしまうとなんだかチープなファンタジーに聞こえて悔しいのだが、、、、いや、、本当にすごいんだって、、、。
そこでひとみが幸吉から教えてもらうこと。
その教訓を生かして約束のオリンピックの舞台に経つこと。
でも、勿論それは時代が違うから、色んな時空の歪みがあること。
そして、小説は先を行く。
2020年6月22日……2020年7月13日………。
その小説の過去と未来の間に自分が立ってこの本を読んで、でも"2020年の"オリンピックは誰も予想しなかった事態に巻き込まれ、初の延期となった。
【世界はひとつじゃない、とあの日、幸吉はひとみに言った。ここではない「世界」のどこかで、彼は88歳になって生きているのだろうか。】
そんな一説がある。
そこで私は思う。
【世界はひとつじゃない、とあの日、幸吉はひとみに言った。ここではない「世界」のどこかで、ひとみは"2020"の東京オリンピックで走っているのではないか】